猫の毛づくろい
猫の習性として毛づくろいは特徴があります。
猫がくつろいで座り、前足に唾液をつけて、耳のうしろから額、鼻先までていねいになでつける。
あるいは猫は座ったまま、片足を高く上げ、下腹部から内股、足先まで舌でなめまわし、最後に耳のうしろを後足でかいたりする。
理由はいくつか考えられますが、そのひとつは、食餌のよごれやゴミ、ホコリ、さらには猫の体表につくノミなどの寄生虫や糞尿などを取りのぞき、体を清潔に保つためです。
これはどんな動物にも必要なことでしょうが、猫ほど熱心に毛づくろいする動物もめずらしいといえます。
猫の毛づくろいの秘密をとく鍵のひとつは、猫の祖先たちの生活にあります。
彼らは、乾燥した、暑さきびしい北アフリカの砂漠で生き抜くために、いつの間にか、少ない水分摂取でも体の機能が正常に働くような体質になりました。
猫が、飲み水も、オシッコの量も少ないのはそのためです。
夏季、日中温度が40度や50度になる砂漠で、猫の祖先たちは、日に何度も体をなめ、唾液の水分が蒸発するときに出る気化熱によって、体温をはやく下げる知恵を身につけました。
体温がはやく下がれば、体力の消耗も、水分の摂取量もおさえられます。
こうして、毛づくろいは、体の小さな彼らが過酷な砂漠で暮らすのにぴったりの「習性」となりました。
さらに、暑い季節には、毛づくろいのとき、唾液の量を増やして気化熱を増やし、涼しい季節には、体表についた余分な唾液をなめとって、体温を調節します。
猫は起きている時間のうち、なんと約30%を毛づくろいの時間に当てています。
これだけ見ても、猫にとって毛づくろいがどれだけ重要かが分かります。
猫の毛づくろいには、上記のような体の健康だけでなく、心の健康を保つ工夫もかくされています。
たとえば、ライバルの猫とケンカしたあととか、飼い主に叱られたあとなど、猫は、よく毛づくろいをします。
これは「転位行動」と呼ばれるもので、緊張感や恐怖感、ストレスなどを、毛づくろいによって発散させているのです。
しきりに毛づくろいをくり返す猫の場合は、何らかの強いストレスから無意識に逃れようとする「問題行動」の可能性があります。
一方、いままでよく毛づくろいしていた猫が、だんだん毛づくろいをしなくなった場合は、体のどこかに病気やケガをしていることがあります。
毛づくろいは、猫の心身の健康状態を判断する大切な手がかりでもあります。