猫の着地
猫が高層住宅の上の階のベランダから落ちる事は少なくありませんが、なかにはほとんど無傷の猫もいます。
猫のその秘密は内耳と目のなかにあります。
猫の内耳には平衡感覚をつかさどる三半規管とともに、リンパ液のつまった「前庭」があります。
猫が高いところから飛び降りたり落ちたりすると、その液体への刺激によって脳に三半規管の平衡状態が伝えられます。
同様に目のなかの水晶体に加えられる刺激によって、自分の頭の位置が脳に伝えられます。
猫はこれらの情報によってすばやく頭の位置を修正し、それにともなってからだも上体から向きを変えていき、足から地面に着地することができるのです。
なお、目の機能が十分に発達していない子猫の場合は、それほどうまく着地できずケガをすることが多いようです。
興味深いのは、同じ高層住宅のベランダから落ちた猫でも、何階から落ちたかによって、ケガのしやすさに差があることです。
動物病院での臨床例では、2階ぐらいの高さだと、うまくからだを回転して足から着地できないことも多いようです。
また、高さが低いために、自分から飛び降りて前足で着地し、骨折する場合もあります。
そして意外なことに、7階以上の場合のほうが、猫にケガが少ないということです。
空中を落下する間に体勢をととのえ、四肢で見事に着地して、たとえ下がコンクリートでも無傷な猫も見かけます。
ただ、あまり高いと頭に大きな重力がかかるため、着地したとき首の筋肉が頭の上下動を支えきれず、地面にアゴを打ちつけてアゴの骨を折るケースが少なくありません。
最近は、室内飼いで運動不足のうえに、おいしいフードをたくさん食べるため、肥満傾向の猫が多く、タンスなどの上から飛び降りただけで足を骨折する猫が増えているようです。
また、ずっと室内暮らしで高層住宅の上層階にいても、高さに対する感覚が身につかず、ベランダから気軽に飛び降りてケガをする猫もいます。
交通事故同様現代社会の危険度は、猫が本来備えている防衛能力をはるかに超えているともいえます。
野外でネズミを捕ったり、ほかの猫と縄張り争いをしたりする機会が少なくなり、猫が本来もっている敏捷性や鋭い平衡感覚が磨かれないままに歳を重ね、世代を重ねていけば、機敏な猫が徐々に減っていきかねません。